風雲児  烈風伝
   ・冬磯の蜃気楼 マイナースポット「灘」ふたたび

2014年 1月13日 高知県 灘 (高知県黒潮町)
・寒波の中、初釣りへ。
 寒波とともにやってきた一月の連休。それでも播磨から四国へと続く道が雪に閉ざされることはありませんでした。
 そうだ、2014年の初釣りに行こう!と急に思い立ってリサーチ開始。

 「宇和海は厳しい状況ですから、今は来ない方がいいですよ。」というGUREsummitのメンバー・醤油屋さんの情報で宇和海方面は却下。高知南西部の柏島や古満目界隈は好調のようですが、遠いという理由で却下。今回は南九州で楽しんできた後ですので、安くて近くて日帰りできて、よく釣れている場所じゃないといけません。
 しかし、そんな都合のいい場所が ・・・あったんです。

 今回の目的地は、高知県黒潮町、井ノ岬の東側にある「灘」。
 このマイナーポイントが食っているという情報を教えてくれたのは、いつもお世話になっている釣巧会のリョータさんでした。

 「6時半に灘の方に来て。」
 この灘の掛川渡船は、最近になって井ノ岬の西側「伊田」エリアの渡船と権利を買い、「灘」と「伊田」の両方に渡し始めたのですが、この日は灘の方に行くようです。

 四万十中央ICから30kmも離れていない灘への釣行は本当に楽。
 まあ今回は、いつも渋滞している赤穂で用事を済ませたり、瀬戸大橋のたもとまで高速道路を回避したり、旧来型の携帯電話の小さな画面で大河ドラマ「軍師官兵衛」を観たりしていたので、相当時間を食いましたけどね。
 地元播磨が舞台の大河ドラマ、特に今回は我が家の裏山の城主が先鋒となって活躍した室津襲撃事件が描かれるとあっては、小学生以来の赤松ファン、それも龍野赤松氏のファンとしては見ないわけにはいかんでしょ。事件に大きく関わっている赤松本家が存在しないことになってたり、赤松家臣が架空の人物だったりと大幅に改変されてはいますが、政秀公が映像で見られることなんて二度とないでしょうし、演じている団時朗さんも素晴らしい!ただ、脚本には感情移入させるほどの力は無く、ツッコミどころばかりが目立つドラマになってしまってますけどね。

 おっと、大きく脱線してしまいましたが、とにかく日付が変わる前には港に到着。クーラーやバッカンを車外に追い出して、ホテルワゴンRで一泊です。
 外気温はマイナス2度。今夜はマイナス6度くらいになっている地元よりはマシですが、よく考えたら地元で車で寝ることなんてないですもんね。色々着込んで目出し帽被って寝袋に潜り込んで眠りにつきますが、目の周りが寒さで痛いし、仕事に関するアイデアがふと思い浮かんできたりして、結局のところあまり寝られませんでした。

低い磯への磯着けに特化した掛川渡船。
 朝食とって、歩いてすぐのトイレに行って、ボチボチ着替えようかと思っていると、リョータさんから電話がかかってきました。「港まで遊びに行くつもりだったのに寝過ごした〜」と^^
 お会いできなかったのは残念ですけど、代わりに私のテンションを急上昇させるような情報を教えてくださいました。
 「寒波の前ですが、40cmとか45cmとかの尾長が出てたそうですよ!みなさんブチブチやられてます。この寒波でどうなったか分かりませんが、太い仕掛けで頑張ってみてください!」
 よし!今日は出番なしかと思われたゼロサムX4タイプVでスタートしてみよう♪ハリスも2号以下には落とさんぞ〜!

  周りを見ると車の数が増えています。昨日は22人の大会だったらしいけど、今日も割と多そうですなあ。ほとんどが地元の方のようですが、徳島からも来られてました。
 そのうち船頭さんが登場して、一番船が薄明の海に出航。私は港で待機です。

 渡船は小さな船外機の船ですからなかなか帰ってきません。その間に常連さんとしゃべって時間を潰しました。
 「この辺は低い磯ばっかりやき、ああいう船やないといかんのよ。北西が吹いたらベタ凪になりよるし、東風なら伊田から出るし、この時期には最高! でも夏はいかん。ここは波が一番集まってくるき。地震の時には34mの津波が来る言うがもこの場所よ。」
 あの地震以来、高台への階段が急速に整備されているようですが、磯の上にいる時だったら助かりようもないでしょうなあ。

井上バエと言ってたかな?とにかく人の名前が
付いた磯。隣はウノハエ。
・二番船で出発
 6時45分ごろに帰ってきた船に乗って出発。ゆっくりと北の方に向かいます。
 風は山並みにシャットアウトされており、海は鏡のように穏やか。高揚した心身をキンキンに冷えた空気が包む心地よさ。

 まず、ウノハエと、その近くにある井上バエだったか、人名の付いたハエに一人ずつ降ろし、さらに北へ。灘は磯の数が少ないと勝手に思い込んでいましたが実は結構な数があるようで、30人規模の大会でも大丈夫だそうです。
 お次は灘の人気磯の一つ、割と大きなフカバエに2人が渡礁。

 私は船長からハチビョウに行こうかと言われていましたが、兵庫から来たとか、色々としゃべっているうちに船長の気が変わったらしく、もっと釣れる場所に行こうという話になりました。磯の名前を聞いてみると、「「消防署の裏」の隣の・・・ え〜っと、出てこん。年を取ったら度忘れして困る。」とのこと。
 でも、その直後に思い出してくれました。「Tさん、そういえば前に来てくれたことがあったな!」って^^

 辿り着いたのは石材屋のやや南、塩作りか何かのビニールハウスの沖にある、ザワザワと波が洗うハエ根を従えた小さな磯でした。
 ロープを持っているかという船長の問いに持っていないと答えると、船尾にしまっていたロープを貸してくれました。
 今日は10時ごろが干潮で、その後上げ潮に転じると船着き付近の小さな足場しか残らなくなるので道具をくくっておくようにという忠告と、他のお客さん同様、何かあったらすぐに電話をするようにと言い残して、船は港へUターン。

・3連続
                 ↑黒潮町佐賀    マツエモン
     国道56号線         ↓灘港  
 船長が渡礁直前に思い出した磯の名は「マツエモン」。「太田瀬」「みゆき」「マツエモン」と、年末から3連続で人名由来と思しき磯です。こうなれば次回は名鹿のブンゾウ、クマゾウか、柏島の池田バエ、山田バエでも狙って記録を伸ばしてみるかな・・・。そんなことを考えながら準備を整え、港側の中央部を狙って第一投。

 0号ウキにガン玉7号を打ったスルスル仕掛けに反応が出たのは数投後でした。あっという間に姿を現した2014年初の獲物はアカササノハベラ。まあよくあることですな。

 水中の様子はよく見えませんが、水面ではキビナゴかトウゴロウイワシが跳ねています。他のエサ取りは終日視認できず。それでも何かはいるようで、サシエがいつまでも残り続けるということはありませんでした。

 7時43分、開始30分弱で本命がヒット。磯際から竿1本くらいの所で食ってきた32cmの口太グレです。ただ偶然釣れてしまったという感じで、後に続けることはできませんでした。

 8時過ぎ、水面が突然炸裂しました。ボイルです!正体不明の大きな魚が水面のトウゴロウイワシにアタックしてきたのです。
 今回はこういう事態を想定してシーバスロッドを持ってきていましたが、磯上のスペース確保のためにまだセットしていませんでした。
 ロッドケースに駆け寄り、大急ぎでロッドを組み立てていきます。ポケットの電話が鳴っていますが今は無視してミノーをセットしフルキャスト!
 でも残念、間に合いませんでした。後で船長に聞いたらハマチが回遊しているとのこと。

干潮時のマツエモン。満ちてきたら
道具を置いているところしか使えなくなります。
・超常現象!?
 一息ついたところで電話を確認すると、先ほどの着信はリョータさんでした。かけ直して状況報告すると、「えっ!まさかの名礁マツエモンですか!」と驚かれてました。前にリョータさんのブログで聞いたことのある名前だな・・・くらいしか考えてなかったけど、そんなええトコに上げてもらってたんや!
 リョータさんはこの電話で、「まわり一周どこでも釣れますけど、やはり港向きがいいようですね。竿1本くらいの所で落ち込んでいて、その際に大きいのがいますよ!」と、逆光のために未だ磯の全貌を掴めていなかった私にとって、何物にも代えがたい情報を教えてくださいました。

 サシエが取られたり吸われたりすることが多くなってきましたが、ウキが見えないので対応できません。そこで今回も棒ウキT-hope G2を投入。すると見事にアタリを表現してくれます。しかしながらそれはツンツンと細かく入っていくだけで、早合わせをしても掛りませんし、待てばすぐに浮いてきてしまいます。

 そろそろ煮詰まってきた9時過ぎ。こういう時は景色でも見てリフレッシュしようかと、前方のフカバエを見た時に違和感を感じました。背景の井ノ岬から張り出した地磯や沖磯、航行中の船などが、何と空中に浮かび上がっているではありませんか!

 超常現象!?いえいえ、これは水温と気温のギャップによって発生する蜃気楼の一種、浮島現象です。この辺りでは特に珍しいものでもないそうですけど、じっくりと見るのは初めての光景。
 それにしても惜しいことをしました。この日の日の出は「だるま朝日」だった公算大ですし、冷え切った快晴の日にのみ現れる「かぎろひ」という現象を見るチャンスだったのになあ。どちらも全く気にしていなかった・・・。

国道から丸見え。トラックやお遍路さん、土佐くろしお鉄道
などが行き交い、磯の上までも賑やかです。
こりゃ腹痛になったら大変だ・・・。
・厳しい釣り
 フカセの方は相変わらず釣れていません。ルアーの方も不発。2度ほどあった単発のボイルに即応してペンシルベイトを逃げ惑わせましたが、水面が割れるようなことはありませんでした。先ほどと違って跳ねた魚が本当にフィッシュイーターだったのかすら疑問に感じるボイルではありましたが。

 11時過ぎ、K.543 第4楽章の心浮き立つようなメロディーがポケットの中から溢れ出してきました。リョータさんかな?と思って携帯を取り出すと、掛川渡船の船長からの釣れているかという電話でした。
 「釣れた?えっ、一枚?30cmはあるやろ?これから満ちてきたら良うなるけん、気を付けて頑張って。何かあったらすぐに電話するように。」
 折角いい磯に乗せてくれた船長のためにも、どうにかして結果を出したいのですが・・・。

 この時、私は狙いを佐賀側に変え、磯際やシモリの海溝に00ウキのスルスル仕掛けを流し込んでいました。尾長グレがいくつか食い付きましたが、いずれもコッパ。保険として23cmを1枚だけクーラーに収めとくか。もう少しいいサイズも掛ったんですけどね、浮かせた瞬間にハリ外れ。どうにも渋いなあ・・・。

・満ち潮とともに
 これではアカン。こんな状況でウキ止め無しの釣りなんかしとったら撃沈や。
 そこで私は道糸にウキ止めを取り付け、タナを細かく探っていくことにしました。ポイントも実績ポイントだという港側に限定して専念することに決めました。

56号線の展望東屋の辺りから見た灘の磯。渡船は井の岬の
付け根から出ます。
 この選択は正解だったようです。
 12時5分、リョータさんと電話でしゃべっている最中にアタリがあり、27cmの尾長がヒット。さらに、ウキを00からG5に変更し、7号のガン玉を2つ打った仕掛けに変更した12時40分には、2ヒロ弱のタナで36cmの口太がヒットするなど、リリースサイズを交えていいテンポで竿が曲がります。
 やはりウキ下の調整は相当シビアで、ウキ止めの位置が10cm15cmずれると全く掛からなくなります。常に仕掛けを気にかけて、刻々と変化する狭いヒットゾーンを探し続ける釣りを強いられます。

 潮が随分と上がってきました。ハエ根は完全に水没しているわけではありませんが、波が這い上がってこない場所が限られるようになっています。さらに沖から吹き付けてくるようになった風が波を煽るので、使えるスペースはかなり狭くなってしまいました。私はルアーロッドを完全に片付け、バッカンをクーラーの上に置いて足場を確保し、釣りを続行しました。

 狭くなった代わりに、磯の周囲はいい感じになっています。ざわつく波がグレをポイントに呼び込んでくれています。それでも食いの渋さは相変わらずで、気を抜くとすぐに反応が無くなりますし、ハリ掛かりも浅く、フックアウトも多々ありました。
 そこで、ハリを短軸の5号に落とし、充分に飲ませることで32.5cmの口太をゲットできましたが、その直後に食わせた良型の魚にはハリスを噛み切られてしまいました。尾長も混じっている状況の飲ませ釣りは諸刃の剣ですなあ・・・。

 その後、14時38分には、速攻グレX7号で尾長35cmを仕留めることができましたが、数度試みた撒き餌の集中運用の副作用が出たのかアタリが遠のき、15時半に納竿。

 終わってみれば36〜32cmの口太3枚、35〜26cmの尾長5枚という釣果でした。
 さすがは名礁マツエモン。どの磯でも厳しく、一のハエでは30cmを超えたのが全員あわせて3枚、フカバエでも小さいものばかりという中、なかなかの釣果を上げることを私にでも許してくれました。昼食の時間も惜しんでやり切った甲斐があったというものですね。あ〜、腹減った〜〜。

 船長によると、ここ灘での釣りは今後ますます期待が持てるそうです。まだ見ぬ伊田の磯にも興味津々ですし、空撮マップにも載っていない様々な磯がマイナースポットに目の無い釣り師を待ってくれています。それにすぐに帰れてしまうこの近さ、楽さといったら♪
 西に進むか、ここで止まるか、悩みの種が増えそうです。

 ● 灘 nada
利用渡船 掛川渡船 出港地 高知県黒潮町・灘漁港
時間(当日) 6:30〜15:50
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯の予約可
磯替わり 不明
詳細 高知県黒潮町 井ノ岬周辺(灘・伊田)の磯
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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